「保科、語る。」は、株式会社環境向学の保科壽治が、自然環境や水など私たちの生活に関わる出来事や情報について語るコーナーです。
『いつから水商売やっているんですか・・・?』という質問を耳にします。
第1回目としては、やはりこの仕事を選んだ理由から「語る」こととします。
20年ほど前のことになります。
東京都下西多摩郡日の出村という地に、東京都の産業廃棄物最終処分場が建設される話が起こりました。
生来の野次馬的性格と、自然環境の変化に違和感を感じていた私は、東京都主催の公聴会に、漠然とした不安を持ちながらも勇んで出席しました。
東京都語担当者の説明を要約しますと、
1.産業廃棄物の処分場が将来足りなくなる。
2.廃棄物を高温で焼却し灰化した残留物を埋める。
3.地中への影響をさけるために埋立地の表面はコンクリートと防水層で遮断する。
というご説明でした。
『何かヘン・・・?』と思い、次のことを尋ねました。
A.コンクリートは中性化し徐々に強度は低下するはずです。
B.防水工法で10年以上の防水性能が保障されている工法はありません。
C.何年ぐらい埋めっ放しにするんですか・・・?
D.危険な物質が溶出する心配は無いんでしょうか・・・?
答えは・・・?
そう、答えられないんです。
数年後、たしか学習研究社発行のムックだったと記憶していますが、(違っていたらゴメンナサイ)この産業廃棄物の最終処分場から溶出してくる廃水についての記事をみつけました。
濃い茶色で鋭く光ったような色の廃水でした。水質を測定されたらしく、その検査結果が掲載されておりました。
そこには、農薬や重金属は当たり前で、ダイオキシン類や放射性物質までもが検出されたと書かれておりました。
更には、これらの廃棄水は地下水として流下し、多摩川の支流を経由し、本流にまで流れ出すことが予測されていたのです。
私は大田区に住んでおり、まさに多摩川から多くの取水を行い水道水として利用していたので、
『こんな醜い水を飲まなくてはならないのか・・・!』
『何とかする方法はないのか・・・?』
と案じるようになりました。
偶然というのはこんなものでしょうか・・・?
米国製の高性能浄水装置にめぐり合ったのです。
説明に来られたのは、米国人技術者と家族が米国在住の日本人の2名の方々でした。理論整然としたお話(日本語)は充分納得いく内容であり、お話を聞くにつれ、米国へ勉強に行きたい気持ちを抑えられなくなりました。
そこはカリフォルニア州のあちこちであり、色々な会社でした。
【ペリエ】といえば有名な清涼飲料会社ですが、このフランス国籍の飲料水製造会社が米国に於いて、今で言う【宅配水】の製造を行っていました。
『あなたの国では良い水が産出されているのに、何故米国まで来て浄化した水を販売するのですが・・・?』
と尋ねてみると、
『広大な面積を確保し水源を汚れから護っているが、大気も地下水も国境を越えて繋がっているから、いつまでも良い水が産出される筈が無いでしょ!』
まさに日本の将来を予測したような回答をいただきました。
日本は他国と隔離している地理的優位性があるため、こんな簡単なことが気が付かなかったんですね。
汚れた空気は偏西風に乗って、自由に移動します。
汚れた水は地下水脈を通って、日本中あちこちに移動できます。
湧き水がきれいなのは今だけ。明日にはもう水質汚染が始まるかもしれない。
「山深く緑濃い地に湧き出る清水は、素晴らしくきれいであり甘く美味しく人に優しい。」と思っていた、というか、思いたかったんでしょうか。
確かに雲から滴り落ちる一滴の水は、正に純粋であり何の汚れもありません。
しかし、大気中には、工場の煙突から排出される塵埃や化学物質、車からは窒素性酸化物などが日夜排出され、汚染空気は風に乗りどこにでも移動します。
雨だれとなった【純水】は、無垢がゆえに大気中の不純物をとことん吸収し、分厚い地層を通過して地下水となったり、地表を流れる水流となったりしますが、化学物質や有害化合物は、人間が造りだした【異物】であり、地球の循環サイクルでは清浄化できないものなんですね。
残念ですが、深山の湧き水や各地の名水は、もう純水でもなければ安全でもない水になりつつある事を、改めて認識するようになりました。
地球の循環サイクルを考え始めたとき、私たちは健康に長寿を全うする権利と、地球の未来に貢献する義務がある、と思うようになりました。
第一に、空気や水を汚さない努力を始める。
第二に、出来る限り安全な食物や水を摂る。
第三に、健康に長寿を全うする方法を講じる。
こんな思いが形になったのが、現在の仕事です。そう、「水商売」の始まりです。